When you wish upon うた

歌に願いを

ヒューリスティック・シティから振り向かずに去る4人の女たち

 

1億2000万人のドルオタの皆様。お久しぶりです。ちえぴです。

 

 

 

"現場"なき暗黒の世界にまばゆい光を注いでくれたフィロソフィーのダンス(以下フィロのス)に感謝しつつ、久しぶりのブログを記します。ライブ内容についてかなり言及するのと、新曲についても少しだけ言及しますので、これから名阪会場に足を運ばれる方・これから配信をご覧になる方はネタバレOKであればお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dance with me tour 2021

フィロのスのDance with me tour 2021(以下DWM2021)東京公演に行ってきました。

ざっくりライブ概要についてはpopnrollさんの記事を載せておきます。

popnroll.tv

 

全体を通して、「フィロのスの今まで」をしっかりと踏襲しつつも、「これからのフィロのス」を魅せようとするエネルギッシュでキュート&クールなライブパフォーマンスだったと記憶しています。生バンドで映えるアイドルNo.1であることを立証してくれる熱量のある音楽。フィロのスが放つ音楽を、演者のみならず、観客サイドも作ろうとするFeel Free with Musicな空間。ファンとの距離感が近く、ナイアガラ滝もびっくりの高低差を感じるアフタートーク。どれをとっても最高の3時間でした。もしかすると1年間に生まれる自分の笑顔の7割以上がフィロのスのライブで生まれているのではないか*1と思うほどに終始満面の笑みにさせていただいたので、今私は頬が痛いです。

 

今回のDWM2021で初披露された新曲の2曲も、ツアーコンセプトに沿った内容で、ライブ映えする2曲だったと思いました。アニソン的旋律も聴こえてきましたが、そこをしっかりとフィロのスの音楽にまで落とし込んでいたとステージを見て感じました。次にリリースされる2曲は今後のライブの必殺楽曲になるだろうと確信しています。まだ聴いていない諸オタクの皆様に置かれましては、音源だけでなく、ぜひ現場に来て生で聴いてほしいと切に願います。

 

 

 

ヒューリスティック・シティ』

さて、この僕が久しぶりにはてブを書こう、書かねばならない、と感じたライブパフォーマンスがこのDWM2021にはありました。表題に書かれた『ヒューリスティック・シティ』です。

youtu.be

生バンドが付随した際の恒例になりつつある「アコースティック」のライブコーナーで披露された『ヒューリスティック・シティ』。そう、アコースティックアレンジ版で今日の『ヒューリスティック・シティ』は演奏されました。今まで何度もライブで聴いてきましたが、今回の『ヒューリスティック・シティ』は、これまでのどの『ヒューリスティック・シティ』よりも「4人が描きたいもの」が克明に描かれていたと同時に、今のフィロのスの"強さ"を反映していたと感じました。

 

 

 

しつこい女たち

ボサノバ風にアレンジされた『なんで?』から間髪入れずにアコースティック『ヒューリスティック・シティ』へと入っていく瞬間、質の濃い失恋文脈から楽曲が放たれたことにまず天を仰ぎました。私(女)の価値をわからないまま結婚していった男への執着を捨てきれない様子が垣間見える『なんで?』から、捨てなくてもよかったかもしれない過去との決別を選ぶ女心が描かれる『ヒューリスティック・シティ』がつながる瞬間を、この耳で聴き取りました。

私はあの瞬間に、神ではなく、フィロソフィーのダンスに感謝しました。おそらくセトリは彼女たちが作ったのでしょう、天才だと思いました。唯一、神に感謝することがあるとしたら、フィロのスの4人を産んでくれたことでしょう。そしてこのフィロのスをプロデュースしてくれているのは紛れもなく加茂啓太郎氏であります。加茂と神は「かも」/「かみ」とひらがなにすると一文字違いなので、そんなに大きな違いはありません。よって加茂啓太郎プロデューサーは神Q.E.D.

ちなみに僕はフィロのスの4人が「しつこい女」であってほしいと常日頃から思っています。ステージに対する胆力も、男に対する握力も、どちらも備えている女たちであってほしい

 

 

 

ハーモニーは良い女から生まれる

ヒューリスティック・シティ』の冒頭、静かにジャジーなコードを奏でるキーボードと共に、会場に奥津マリリ氏の声が響き渡ります。この時点で涙を流すオタクも少なくないと伝聞していますが、私が驚いたのは次のサビでした。通常4人ないし2人のユニゾンで歌いあげていたはずのサビが、4人のハモりで披露されたのです。バックバンドの音数が少ないこともあって、ポリフォニックさが際立ち、いつもよりもゴージャスかつ神秘的にも感じられました。ほかの楽器の音も聴こえるなかで4声をハモるというのは並大抵のことではないので感動しました。「良い女」であることの条件はハモれることであると確信した出来事でした。

 

 

 

シミュレーション・ヒューリスティック

4人の生むハーモニーを堪能していると、曲はあっという間に終盤へ。名残惜しいような気持ちになっていると、バッグバンドの音数が増えました。ここにきてドラムやベースなどの楽器に動きが加わるようになったのです。まるで、4人の女が振り返ることをやめて歩み始めるかのような、速度が加わったのです。

 

 

 

すると、なんということでしょう。私の前に、闇夜に瞬く星々が現れました。しばらくして、私はそれらが高層のビルで輝く無数の小窓であることをようやく理解しました。しかも、それを見ているのは私だけではなかったのです。その刹那、会場にいるすべての男女が、Zepp羽田の座席ではなく、夜に長く伸びる建物に囲まれた公園のベンチに座っていました。

 

「別に、嫌いじゃないよ。」

その言葉に少しだけ力を緩めた男の手から、離すつもりのなかったその手が――するりと、しかし男の手のひらをなぞるようにすべり落ちた。

「けどね。きっと私たち、うまく行かないと思う。」

 そう一言告げて静かに立ちあがり、男を一瞥もせずに、去っていく4人の女たち――奥津マリリ日向ハル十束おとは佐藤まりあ――それぞれの女たちが過去と訣別し、踏み出していくその歩みが、バックバンドと共に4人によって奏でられていたのです。儚くも芯を強く持とうとする女たち、その幻視が会場全体を過ったのです。紛れもない集団幻覚でした。確実に視えました。

 

生まれなかった未来と
わからなかった論理と
忘れられた夢にも

この歌詞を歌いあげる奥津マリリ氏の歌でようやく現実へと引き戻された私たちは、この『ヒューリスティック・シティ』という楽曲の旨味をドラマティックに味わいました。生バンドをここまで巧みに使う演出のできるアイドルは類を見ません。この曲は「経験が恋を呼ぶ」という歌詞で締めくくられますが、恋を呼ぶ経験をさせられたのは私たちの方だったのかもしれません。

 

 

 

他界させないアイドル2021=フィロソフィーのダンス

ところでライブのMC中に、十束おとはさんから「他界しないでいてくれてよかった」という旨のコメントがあったのですが、こういう気持ちにさせてくれる機会=ライブが必ず訪れることを知っているので、他界するわけがないんですわ。現場が乏しい世界でも最高を見せつけてくれるフィロのスをこれからも担いで回ります。最高すぎて怖いぐらいですからね。多分「フィロのスの悪魔」がいたらチェンソーマンと相当いい勝負します。かなりもつれ込むと思います。そのぐらい最高です。これからも行けるライブ全部行きます。

 

 

 

 

 

アコースティック版

ヒューリスティック・シティ』が聴ける

見逃し配信ライブはこちらから。

 

 

 

 ご清聴ありがとうございました。

*1:普段ほとんど笑わないことを示唆するかのような言い回しで、陰キャであることを自白せざるを得ません。