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「eスポーツ」は「オンラインゲーム」の単なる総称ではない

  

はじめに

 最近「eスポーツ」という言葉をちょくちょく耳にするようになりました。この言葉が一人歩きしているのではないかという疑念がとうとう確信になりつつあります。そこで、私の発信がどこまで効力があるかはわかりませんが、一人のゲーマーとして「eスポーツ」というジャンルについて、これまでのオンラインゲームの歴史を踏まえてお話させてください。わからないかもしれないな、という言葉には注釈を付けています。また、言及している内容は私の経験や知識に則っており、ソースが提供できないことはないと思うのですが現時点でこの記事に引用ができておらず*1、内容に誤りや不備があればぜひご指摘をいただければと思います。

  

 

私について

 本題に入る前に、私について少しだけお話をします。私は20代後半のゲーマーで、ゲームとはやや異なる業種で働いています。ゲーム歴については、音ゲーだったりRPGを好んでプレイしていたのですが、7~8年前に Dota2というMOBA*2の傑作に触れて以降、有名どころの「eスポーツ」大会をオンラインで視聴・観戦をするようになりました。7~8年前というのは、海外の大会で巨額の賞金が付されるようになった時期だと認識しています。また、日本のオンラインコミュニティでeSportsという英単語を目にするようになった時期でもあったように思えます。ちなみに、私が今時間を割いてプレイしているのは、プレイ時間が長い順にDota Underloads, Rocket League, LoLなどです。MOBAは時間の限られる社会人にとってプレイを継続することがなかなか厳しいですね。なお最近気になっているのはR6S(レインボー・シックス・シージ)。今年初めて世界大会を見てその知略あふれるプレイングに魅力を感じ、ソフトを買おうと思っています。

 

 

 「eスポーツ」=「オンラインゲーム」の総称?

 さて、ここからが本題です。訳あって、自分よりも少し年上の方々と「eスポーツ」についてお話する機会が増えてきました。あまり馴染みがないものの「eスポーツ」をひとつのビジネスとして認識している皆さんとお話する中で、どうもこの「eスポーツ」が単なる「オンラインゲーム」を指す言葉として認識されている節があるようだ、ということに気付きました。もちろん、ゲーム愛好家の側から「eスポーツ」という言葉がビジネスライクなものとして捉えられている雰囲気を察知はしていました。が「現実はそうではなくeスポーツに熱意ある方々が増えてきたのだ!」と勝手に思っていたところがあり、私にとってこの気づきは非常にショックなものでした。

 

 実のところ「eスポーツ」は従来のオンラインゲームと一線を画す点がいくつかあります。そして同時に、この点が「なぜ『eスポーツ』はここまでの人気を得るようになったのか」ということの理由になっている、と私は考えています。

 

 

 

 

 

オンラインゲームのはじまりとMMORPG

MMORPGの時代

 従来のオンラインゲームを曖昧な定義のままにしてしまうと、あまりにも広範なゲームを射程に捉えてしまうので、今回は「2000年代に日本で人気を博したオンラインゲーム」と定義することにします。この時代はMMORPG*3の全盛期でした。MMORPGは、ゲームごとに世界観(とサーバー)が用意され、多くのプレイヤーと共にRPGを楽しむことができるものです。たとえば、メイプルストーリー、野菜村、レッドストーンラグナロクオンラインリネージュファイナルファンタジーXIトリックスター、MU・・・などなどです。当時は挙げればキリがないほどにサービスが乱立していました。


 私もかつて色々なMMORPGに手を出して、学校の友達と夜な夜なプレイを続けていました。無課金者はとにかくプレイ時間がモノを言うので、睡眠時間を削り、親にこっぴどく叱られながら、マウスとキーボードを乱打する生活を送っていました。 

 

 MMORPGのゴールというのは、仲間とともにボス敵(CPU)を倒すこと・難易度の高いダンジョンを踏破することにあります。ボス敵は強大なので、道中ザコ敵を倒してレベルアップしたり、アイテムのドロップを目指してマップをうろちょろしたりしながら、より強いボス・ダンジョンを目指していきます。従来のRPGが「プレイヤーひとりで完結できる」ゲームデザインだったのに対して、MMORPGは「仲間と一緒に挑まなければクリアできない」ものになっていて、そこが魅力のひとつでもありました。私は幸い友人に恵まれていたので、パーティを組んでダンジョンやレイドに挑むのも容易でしたが、ソロプレイヤーは何らかのコミュニケーションツールをつかって自分と同レベルのプレイヤーを呼び集める必要がありました

  

 

 

MMORPGの衰退原因

 さて、このMMORPGは今eスポーツとしては捉えられていません。そもそもMMORPGの人気は低迷しはじめた(ユニークプレイヤー:同時接続者が減った)と考えられます。たとえば、2010年代に栄華を築いたMMORPGのひとつであるPSO2(ファンタジースターオンライン2)のこれまでの最大同時接続者数が約13万人*4だったのに対して、eスポーツタイトルのひとつであるDota2のこれまでの最大同時接続者数は約130万人*5です。

 

 人気の陰りにはいくつかの理由があると考えられます。ひとつは、数の限られていた「オンラインプレイができるタイトル」が大幅に増えて、さまざまなハードで環境が整い始めたこと。加えて、MMORPGではレベルがカンストしているヘビーユーザーに対して新たな楽しみを提供するために、レベルキャップの開放や高難易度のダンジョンの追加をする必要があり、その結果難易度のインフレが発生したため、ライトユーザーがとっつきにくくなり新規ユーザーが減ってしまったことなどが挙げられるかと思います

 

 ではeスポーツタイトルとして選ばれているゲームはどんなゲームですか、という話になるわけですが・・・実はこの「MMORPGの衰退原因」こそがヒントになっています。

 

 

 

 

 

 

eスポーツタイトルとは何か 

Warcraftシリーズ

 かつて世界的にヒットした RTS*6 / MMORPGのゲームシリーズがありました。それがWarCraft3 / World of Warcraftというゲームです。前者はこれまでのゲームとは一線を画す戦略性と複雑な操作で対戦ゲームの金字塔とされており、プレイヤースキルが如実に反映されるゲームとしてジャンルが確立されていきます*7。後者は広大な世界観と魅力的なキャラクターたち、胸が熱くなるファンタジックなストーリーが世界中のゲーマーの心を鷲づかみにしてきました*8。このWarCraft3が元になっているファンメイドのmod*9DotAがありました。このmodはいわゆるタワーディフェンス型のゲームで、もともとのWarCraftで必要とされていた複雑な操作を減らし、プレイヤーキャラクターのみで戦うことのできるシンプルさとガチンコの勝負感から人気を博していました。このmodは「ゲーム内で1対1で戦うのは精神が磨り減ってしまうので、プレイヤー同士でチームを組んで戦えるモードが欲しい」という理由から生まれたものらしく、その後同じレベルのプレイヤースキルを持った者同士で戦えるようにマッチングシステムを構築し、ブラッシュアップされていきました。なおかつ、元のソフト自体は有料ではあるものの、このmodの導入は無料です。キャラクターステータスに関わる課金のアイテムも存在しないため、modを導入したプレイヤー同士のスタート位置は「ゲームを開始するまで」同じです。「同じスキルを持った者同士で戦える」・「勝つために課金は必要ない」という部分はMMORPGの欠点をうまく突いていると思われます。そして、このアイディアがMOBAの発祥となり、ほかの多くのeスポーツタイトルでもこのアイディアが採用されるようになります。

 

 

 

eスポーツタイトルの共通点

 さて、上記内容からも推察できるように、今eスポーツタイトルとして名前が挙げられるゲームのほとんどに共通する点が「マッチングシステム」「すべてのキャラクター・プレイヤーに勝てる可能性がある調整」です。「マッチングシステム」というのは「同じスキルを持つプレイヤー同士を引き合わせるためにゲームシステム側が持つ選定基準・選定方法」のことです。かつての対人戦モードのあるオンラインゲームでは、対戦する相手同士のパソコンでP2P*10の通信を行う必要があったり、プレイヤーを待機させるサーバー*11はあるものの対戦を楽しめるほど僅差なスキルを持ったプレイヤー同士が出会う可能性が少ない、あるいはそもそもの同時接続者が少なくマッチングさえしないというケースが多かったと記憶しています。また「調整」については、選択するキャラクターによっては勝てる可能性が極端に高かったり、課金して強いアイテムを購入することで優位に立てたり、そういうケースがかつてのオンラインゲームでは散見されていたのですが、これを極力なくすようeスポーツタイトルでは工夫をしています。たとえば正式なサービス開始後もキャラクターやアイテムの細かなステータスの微調整を行っていますし、課金で購入できるのはステータスに影響のないビジュアルアクセサリーのみというタイトルもあります。この点にいち早く気付いた国産のゲームタイトルがあります。それが『大乱闘スマッシュブラザーズ』でした。

 

www.redbull.com

 

 

 

マッチングシステムと微調整の先に生まれたもの   

 さて、このようなマッチングシステムや調整が洗練されていくと、高度なプレイングスキルを持つ者同士が集まりやすくなります。このことは常軌を逸したテクニックや人間離れした反射神経が培われる土壌となりました。ある時期からオンライン上でハイレベルな者同士の戦いの様子が画像・動画などでシェアされるようになり、多くのプレイヤーがハイレベルな戦いに注目するようになりました。ゲームクライアント上にも観戦の機能が付くようになり、「あのエリアのあのプレイヤーは強い」とか「あのテクニックを使って彼のように戦えば勝てる」といったように、プレイヤーに関する情報も集うようになります。こんな感じで、オンラインコミュニティ上で「スタープレイヤー」が誕生するきっかけも整っていきました。さて、このスタープレイヤー同士が対戦するとなるともう大変です。その予定までもがシェアされるようになり、多くのプレイヤーの間で「どちらが勝つと思うか?」という話題に火がつきます。しまいには自分のゲーム内アイテムを賭けたり、リアルマネーまで賭けたりする者まで現れる始末。これに目をつけたのがギャンブル業界で、オンラインゲーム対戦に関する賭け事をサポートするようなシステムを提供するようになりました。こういった賭け事が今ではeSports bettingと称され、様々なギャンブルサイトがサービスを展開しています。

 上記のような展開は、あくまで先に述べたような順序があったわけではなく、同時多発的に巻き起こっていったと私は考えています。しかしながら、このようなエコシステムが成立していったことで、お金になると見込んだ投資家や企業がスポンサードするプレイヤーが登場するようになり、彼らを擁するプロチームやプロリーグが誕生するようになります

 

 

 

 

 

一旦まとめ

 ここまでの経緯(かなりざっくりとしたものではありますが)を認識して、初めて「『eスポーツ」は単なるオンラインゲームの総称ではない」ということが見えてくるかと思います。繰り返しになりますが、eスポーツタイトルとして大切な点は2つあると考えます。ひとつはプレイヤースキル以外の要素*12に因らない「機会均等」なゲームであること。もうひとつはすべてのプレイヤーの戦いが魅力的に見えるような「不断の調整」が行われているゲームであることです。

  

 では現状の国内のeスポーツを取り巻く状況について考えると・・・・・・どうでしょうか?などと話をはじめてしまうと、とってもややこしくなって文字数もめちゃくちゃ増えてしまうので、一旦この辺で記事はとめます。この記事が何らかの議論の発端になってくれたら僕は万々歳です。

 

 

 

*1:がんばって随時追加していこうとは思いますが

*2:Multi Online Battle Alinaの略

*3:マッシブリー・マルチ・オンラインRPG

*4:https://www.mmoinfo.net/trivia/members_count.php

*5:https://steamcharts.com/app/570

*6:リアルタイムストラテジーの略。プレイヤーが自軍のありとあらゆるユニットを操作し、敵陣営と戦うタイプのゲーム。

*7:かつて韓国ではこのRTSが一大ブームになり、多くのプロゲーマーらを輩出していきました。

*8:WoWについては2004年にリリースされてから現在までアップデートが続いている超ド級の名作だと認識しています。

*9:ゲーム内のプログラムを利用してつくられた二次創作ゲーム

*10:端的に言うと、一対一で通信を行う方式です。特定のポートを開いておいてお互いのIPアドレスを伝える必要があったゲームもありました。

*11:待合室のようなものと考えてください

*12:わかりやすいのは課金力