When you wish upon うた

歌に願いを

「フィロソフィーのダンス」との邂逅

僕が毎週のルーティンとしてやっていることがある。週ごとに更新されるSpotifyのDiscoverとNew Releaseのプレイリストを片っ端から聴くことだ。ただし、つまらないと思ったら、飛ばす。

 

順ぐり聴いていく中で、気になるグループ名があった。フィロソフィーのダンスだ。SNS上で名前を見かけていたほか、タワレコ錦糸町店でよく見かけていたため、今人気を集めつつあるアイドルグループらしいという認識は持っていた。ただし、独断と偏見により、彼女らの曲を聴いたことは一切なかった。

 

ここで出会ったのも良い機会だと思い、飛ばさずに再生をした。流れてきたのは『ダンス・ファウンダー』だった。曲を聴いてのファーストインプレッションは、度肝を抜かれたの一言に尽きる。よりミクロに言うと、いわゆる「アイドル」というイメージからは想像できないほど型破りでソウルフルな歌声を持つ女性がいた。僕にはこれが衝撃だった。

 

いまや『ダンス・ファウンダー』 は彼女たちの代名詞でもある

 

いやしかし、どう考えてもジャケットに写っているうら若き*1女子たち*2から出ている声だとは、にわかには信じがたい。歌を聴いてジャケットを見直し、一体どの人からこの歌が放たれているのかを想像する。リピートして、ジャケットを見直して、またリピートする……という行為を幾度となく繰り返した。が、結局のところ、誰がどのパートを歌っているのかについては、この時点では全くわからなかった。

 

とりあえず、各メンバーの名前だけでも覚えようと思い、天下のGoogle先生にお願いをして、顔と名前を一致させた。そして、後々YouTubeで見ることのできたライブ映像から、この歌声の持ち主が誰かがわかった。僕が後に「神」と崇め奉る日向ハル」: 通称ゴリゴリのゴリ、ハルちゃんである。

twitter.com

 

近年のレコーディング技術が進歩したこともあるため、この歌が「本物」なのかどうかを確かめたいという気持ちが日に日に増していった。ライブに行く機会を伺っていたそんなある日のことである。SNSで繋がっていた高校の同級生が「フィロソフィーのダンス」のファン(加えてファンクラブ会員でもある)というから、これは僥倖だと思い、早速土下座をしてチケットを用意してもらった*3

 

初めて行った「フィロソフィーのダンス」のライブは、渋谷のO-nestで行われていた定期公演のようなもので、歌割りのメンバーチェンジがある内容だった。今思えば、これはとてもレアな経験だったが、当時は片手で数えられるほどしか曲を知らなかったため、その恩恵を存分に味わえたわけではなかった。しかし、今でもその光景を鮮明に覚えてはいる。

 

会場の人の入りも箱パンパンでファン層の厚さを感じたのだが、それ以上に驚いたのは、ファンクな楽曲にアイドル文化がバッチバチに持ち込まれていたことだった。つまるところ、演者の名前を件のリズムで叫んだり、タイガーファイヤーで始まる呪術・サビのフワフワコールや加速するクラップなどなど……オタク的ムーブメントがわんさか巻き起こったのである。他の現場で慣れていなかったら、泡を吹いて卒倒していたに違いない。

 

しかしながら真に恐ろしいのは、そんな破壊的ともとれる行為の合間に聞こえてくる、FUNKY BUT CHICで非の打ち所がない音楽である。他の追随を許さない圧倒的なクオリティでステージから飛んでくる歌とパフォーマンスは、見る人の目を離さない。

 

品川ステラ・ボールで行われた生バンド・ライブは、"伝説"の呼び名が高い。

 

メンバー全員が高水準の歌唱力を持っている中で、やはり気が狂うほどのディーバボイスを持っていたのが日向ハル、その人だった。

 

間違いなかった。「本物」だと思った。

 

 

 

 

 

この日、ハルちゃんは特典会をお休みだったため、直接の会話はできなかった。が、同期女オタクのご厚意に甘えることができたため、握手会には参加した。グッズを1k買うことで特典券が1枚もらえるのだが、この日のレギュレーションはたったの1枚の特典券でメンバー全員と握手ができるというものだった。オタクをお財布としか思っていない運営レギュを経験している身からすると、破格とも思える待遇だった。

 

初めての全員握手は、緊張のあまり顔面がウーパールーパーになっていたと思う。大した感想もひねり出せないまま、佐藤まりあさん(通称あんぬ)にステージが良かったことを告げて、奥津マリリさん(通称マリリ)にはすでに前を行く女オタクに連れてきてもらった話をして*4十束おとは(通称おとはす)さんには女オタクの旦那と勘違いされ、小規模な混乱のなかで握手会は終わった。僕の全身がウーパールーパーになっていたからか、連番女オタクからは楽しめたか心配されてしまったが、ぜひ安心してほしい、大変楽しかった。

 

 

 

 

 

その後のライブもいくつか通った。「二丁目の魁カミングアウト」・「predia」・「大阪☆春夏秋冬」の特大4マンに、テレ朝夏祭りスペシャルワンマンライブ、六本木アイドルフェスに真夏の野音4マン……回を重ねるごとに感じたのは、「フィロのス」には紋切り型なステージがひとつとしてない、ということだった。セトリもみんなが期待しているものを叩きつけてくる。ライブに行くたびに、より輝いて見えるようになる理由がそこにあった。

 

夜の野音で聴いたヒューリスティック・シティほど「エモい」を形どった記憶はない。

 

ある特典会で、ついぞ日向ハル神と対面する機会を得ることができた。僕が「ふしぎなおどり」じみた挙動不審さと共に現れて、日向ハル神のことをあんまりべた褒めするものだから、神からは「お前は本当にオタクなのか?」「他の現場にも顔を出しているオタクであれば安心した」という謎の危険人物アラートを頂いてしまった。大変反省している。

 

なお、令和のアイドル・フロンティアを切り開こうとしている神は、人民に対してかなりフランクであり、分け隔てなく等しく接する聖なる者だったことは、特筆しておくべきだろう*5

 

ここまで日向ハル神にフォーカスしてきたが、他のメンバーも魅力的であることは十分に伝えておきたい。おとはすは天然記念ハイトーンボイスを持つ、ゲーム好きの陰キャクイーン。あんぬはウルトラビューティ腹筋を持つ、赤ちゃんからのモデル体質。マリリは爆裂谷間オバケで、乳だけでなくステージでのレスも爆裂している。と、深掘りしたくなる個性的なキャラクターが満載なのである。唯一共通していることがあるとすれば、変顔が得意。

 

アルバム『エクセリシオール』は、僕がこの上半期聴いてきたアルバムの中でも指折りのマスタリングクオリティである。

 
もしまだフィロソフィーのダンスを知らないとしたら、まずは合間に紹介している楽曲をぜひ聴いてほしい。もちろん、万人に刺さるジャンルだと言うつもりはない。ただし、音楽とアイドルを愛する者であれば、その心臓を鷲掴みにするだけのエネルギーがあることを感じることができるはずだ。もし身体が小躍りを始めたら、次に踊るべきは現場である。そこに間違ったステップなんてない。ぜひ気軽に足を運んでほしい。

 

 

 

*1:?

*2:顔が良い

*3:チケットの為ならどんなプライドも捨てる、というのは転売行為を助長するような気がするので、良い子はやめようね

*4:なお、その女オタクは会社の同僚という嘘っぱちが口をついて出てしまった

*5:酒を飲ませたときの歯に絹着せぬ物言いは天下一品らしい。なおさらに神である