あいねの為に鐘は鳴っていた

はじめに

 

 

 この記事は、4月に放映がスタートしたアイカツフレンズ第1話で鳴っていた鐘について、あまりにも屈折した見方をするオタクの多さに嘆いた私ちえぴっぴが、諸星学園長でもわかるように、「鐘」の持つ社会的役割について、文献などのソースもなしに考えるゴミシンキングをした記事になっています。またこれを通じて、友希あいねちゃんがなぜ湊みおちゃんからの誘いを快諾できたのかを遍くオタクに説く内容にもなっています。誰にでも読みやすいスマートな(怪)文書にすることを心掛けました。比較的まともだと思いますよ今回は。*1

 

 屈折した見方というのはこうです。すなわち、「友希あいねと湊みおの、友情という域を著しく超えた感情の邂逅を祝福するかのような、結婚式における意味合いを伴った鐘の音」という見解です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 湊みおちゃんが差し伸べる手と意志のこもった声が、湊みおちゃんに一目惚れしたあいねちゃんの心を鷲掴みにし、街中に響き渡る鐘の音が喜び讃える、女と女同士の感情〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに僕は女の子同士の破廉恥かつ複雑な感情描写がふんだんに詰め込まれたお話が大好きだよ♡ あさぎ龍先生の『恋は密かに実らせるもの』(R-18)とか、仲谷鳰先生の『やがて君になるとか特にオススメです。良い子は百合漫画読もうね♡♡♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、先述した鐘の音についての理解の中で、僕があまりに惜しいと思う点を次にあげます。この記事で書くのはこの点についてですが、それは次の2点です。

 

1, そもそも鐘の音は、私たちの社会生活の中でどのような意味合いを持っていたのか

 

2, 友希あいねちゃんは、厳しいとすら感じていたアイカツを何故快諾できたのか

 

 この2点について順を追ってみていくことにしましょう。 

 

 

 

 

 

1, 「鐘」というモチーフ

 

 「鐘」というのは私たちの生活に密接に繋がっている事物のひとつであります。歴史を遡ると、鐘は血族や部族の祭事に用いられることが多かったようです

 

 かの有名なロシア人作曲家、ラフマニノフは「鐘の音」を楽曲のモチーフとして使っていました。湊みおちゃんも応援していたであろう、かつてフィギュアスケートで活躍をした浅田真央さんが使用していた楽曲「ピアノ協奏曲第2番」の冒頭でも、遠方から響き渡る鐘の音が表現されています。一説によると、ラフマニノフはモスクワで聴いていた鐘の音をベースにしていたと言われています。この場合の鐘というのはロシア正教の鐘の音ですから、宗教的な意味合いを持っています。信仰心を高揚させ、儀礼や礼拝の時間を知らせる際に鳴る鐘の音です。本編放映前の「フフッヒ」もこれにあたりますね

 

 私たち日本人に馴染みのある鐘の音といえば「除夜の鐘」ではないでしょうか。除夜の鐘については、これも複数の作法・諸説ありますが、煩悩の数である108という回数分の鐘を鳴らすことで、前年を振り返り心地よく新年を迎えようとする意図があるそうです。ともすると、これは時間を知らせる機能も持ちあわせていることになります。恥ずかしながら私にも煩悩はあります。多くは望まないので湊みおちゃんと108秒間握手がしたい。

 

 社会生活のサイクルは時間によって図られています。今でこそ現実世界で鐘が鳴るシーンは限られていますが、劇中で最も効力を発揮しているのはこの時間を知らせる力でしょう。空の色が変わり次いで鐘が鳴ることで、女児であるところの私たち視聴者は、30分という枠の中でそれよりも大きな時間の流れを感じることができます

 

 鐘の音が制作陣によって意図的に用いられていたであろうというのは、いずれの意味合いにせよ皆さんの総意であると思います。しかし、実際問題私たちの世界の鐘は今どのような姿になっているでしょうか。御察しの通り、最近では物理的な鐘というものは姿を消しつつあるようです。私たちの世界の時報は電子制御され、スピーカーから流れ出るものがほとんどになりました

 

 これはなぜでしょうか?想像し難いかもしれませんが、実はこの疑問こそがスターハーモニー学園の土壌、ひいては友希あいねちゃんのスーパーポジティブな精神が生まれた所以を解くカギなのです

 

 

 

 

 

 

 

 

2, 街を耕す鐘

  

 鐘がある場所や空間について、思いを馳せて見ましょう。鳴らすことを目的とした鐘が設置されている建物はそう多くありません。神社、教会など宗教的施設がまず挙げられます。他方で、北は函館・南は長崎まで、かつて港町として機能していた観光地にも鐘が残されています。実際のところ、こうした観光地にある鐘というのは、鳴らすことで恋愛や願望の成就をもたらすものとして言い伝えられているものが多く、結局のところその意味合いは宗教的なものに近いかもしれません。

 

 ところで言い伝えというのは、100パーセントが嘘ではないように思えます。特定の地域に伝承された歌が災害から人々の生活を守る知恵を集約したものであったという話は、天変地異の際に各地で報告されることがよくあります。観光地の鐘の言い伝えは、でっち上げもあるでしょうが、少なくともその鐘を鳴らしに来るだけのエネルギーを持つ人たちの想いは報われるらしいということを私たちに教えてくれます。*2しかしまぁ、観光地化した地域に住まう人々は、二階堂ゆず先輩のように鐘を鳴らしまくる輩も来るでしょうに、大変な生活を強いられていそうですね。そうなのです、ここにきて昨今の音環境を考える上で重要な問題が立ちはだかります

 

 

 

 騒音です。

 

 

 

 高度経済成長期は、新しい建物を建設するためにそこかしこで工事が行われていました。当時は工事の音が「成長の音」として捉えられることもあり大きな問題にはなりませんでしたが、人々にプライベートな空間を分別する意識が広まったことで、この工事の音を筆頭に様々な音がプライベートな空間を侵害するものとして認識されつつあります

 

 例えばキリスト教圏の多いヨーロッパでは、鐘の音が騒音として認識されるようになり、いくつかの教会は電子制御によるスピーカーチャイムに設備を切り替えることを余儀なくされています*3地域によっては、日夜通して15分おきに鐘が鳴るところもあるようです。想像もしてみてください。Twitterで「アイカツを見てください」という長文postを15分おきにタイムラインに流される様子を。最初のうちはファボやRTをもって礼賛するかもしれませんが、そのうちにだんだんとウンザリしてくるはずです。万が一15分おきに「福音」を拡散しないと死ぬのであれば、現代においては音量の調整が必須でしょう。人の心をざわつかせてしまっては、その信仰は削がれていく一方です

 

 聡明な読者の皆さんはもうお気づきでしょう。そう、スターハーモニー学園のある街は、あの鐘がどのような背景でどのような場所に設置されているかはさておきーー恐らくは学校のてっぺんにあるのでしょうがーーとても包容力のある地域であることがわかります。例えば、公園であいねちゃんとみおちゃんが子供たちを追いかけるシーンがありましたね。公園で遊んでいると、近所のおじさん・おばさんが内蔵脂肪たっぷりのお腹に低音を響かせ怒鳴りつけてくることがしばしばある世の中で、あいねちゃんたちは何も恐れることなく縦横無尽に駆け回っていました。近隣住民との関係がシビアな問題になるとしたら、常日頃母親から「もっと静かに遊びなさい」と怒られているはずです。もしそうであるならば、大家族の一員であるあいねちゃんはお母さんの真似をして、子供達を諭すことがあってもおかしくはありません。けれども、そのようなシーンはひとつとしてありませんでした。全身全霊で楽しんでいました。

 

 幼稚園や小学校から聞こえる子供の声すら煩いと感じられてしまう昨今、このようなシーンが盛り込まれた上でそれなりの規模の鐘が鳴るということは、スターハーモニー学園周辺の地域住民は音に対する許容度が高く、アイカツにも広く理解があると考えるべきでしょう*4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3, 鐘の音に逢う

  

 さて、ようやく友希あいねちゃんの話に移ることができます。1話の終盤、ステージを経た上でビビッと来ていたみおちゃんからアイカツの世界に誘われるあいねちゃんですが、その表情は最初からハチャメチャに明るいものではありませんでした。表情から察するに、あいねちゃんは驚きと共にみおちゃんからの誘いを受け取っています。鐘が鳴ったのは、手を握り交わす直前、覚悟をする表情の一歩手前でした

 

 ところで、結婚式の鐘は「カリヨンの鐘」*5と呼ばれることがあるそうですが、この鐘が鳴るのは教会での挙式の後というケースが多いのです。したがって、あの鐘を結婚式の鐘だなんだと言い張るのは、結婚式童貞だと僕は思います。悪く言うつもりはないので、ぜひ親類やご友人が結婚式を挙げるタイミングがあれば、足を運んでみてください。とてと幸せな気分になります。幸せでボコボコにされますカジモドも恐れおののく顔面です。

 

 では、前述したシーンで鳴り響いた鐘はどんな役割を果たしていたのか。ズバリと言うつもりはさらさらありません、様々な解釈があってしかるべきですが、私はこれまで拾ってきた経緯を踏まえて簡潔に伝えるとすると、鐘の音については「あいねちゃんがアイカツを日常に取り入れることを後押しした」と考えます。あの鐘が鳴ったとき、友希あいねちゃんの中には、これまでの柔らかな日々の記憶、家族との思い出、ステージでのみんなの笑顔・応援、その全てが蘇ってきたに違いありません。そして、みおちゃんの手を握る前の、刹那の厳しい表情が生まれ、手を握った後の豊かな笑顔が花開いたのです。もちろん、あいねちゃんが「どーんと来い!」と言えるのは、家族のおかげだけではありません。スターハーモニー学園を創設することに合意し、その鐘の音を夢を追いかける人々への福音だと受け止めてきたその地域の人々のおかげなのです。あいねちゃんの「目指せ!友達100万人!」の精神は、彼女を取り巻く人々の人間的な器の大きさによるものだったのです。鐘の音が無ければあいねちゃんのドラマチックなアイカツへの幕開けを表現するのは不可能だったことでしょう。

 

 ここでひとつ余談を設けましょう。皆さんはなぜあいねちゃんの名前がひらがなで表記されているか考えたことはありますか。答えはおそらく途方もなくシンプル。この物語は女児向けで、キャラクターの名前はわかりやすくしなければならないからでしょう。しかし、友希あいねというネーミングをそっくりそのまま姓名判断にかけてみると次のような結果が生まれます。

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 なんと、。あまりにも不吉。女児向けアニメとして如何なものか。いや待てよ、そもそもあいねちゃんの名前には漢字が当てられていたのではあるまいか。鐘の音によって出逢いがもたらされたのであるとしたら、その名は逢音ではなかろうか

 

 

 

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 たまげたなぁ。吉凶混合とはいえ総画数は大吉です。先ほどの結果とは雲泥の差、主人公の鑑。いやぁなんて美しい字面なんでしょうね。あまりの愛おしさに今僕はディスプレイに向かってキスしています。僕に女の子の子供ができたとしたら逢音ちゃんって付けたいですね。子供のことを考えるような状況にあるのかとか仮に子供ができたとしてアイカツさせるかどうかとかはまた別の話です。こうして鐘の音があいねちゃんにとって重要な意味を持つことが改めて証明されてしまいました。

 

 

 

 

 

 

4, おわりに

 

 いかがだったでしょうか。これだけバックグラウンドに想いを馳せることができるのがアイカツフレンズという作品なのです。なんと(甲高い声)第1話〜第2話まではYouTubeで視聴可能です。今ならタダです。無料なんです。信じられますか。実質無料などではなく、元来無料(期間限定)なのです。この機会にぜひ、アイカツフレンズを見てください。この記事を見てくれた方々はもう1度改めてアイカツフレンズ第1話を見てみましょう。再生回数の人柱になれ。ご静聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

*1:本当はキャプチャ絵も添えて、視覚的にもわかりやすくしたいところなのですが、自分の力量と余裕のなさ、それからバンダイナムコさんからの著作権爆撃を恐れて断念しました。ご了承ください。

*2:鐘の響きを聴いた人たちが「その音に乗せられた想いを感じ取る」ことで集合的な意識の力が働く、なんてこともあり得るのではないでしょうか。ひとりでアイカツ見てるより遠く離れた知らない人たちと実況しながら見るアイカツのほうがおもしろいでしょ?そういうことです。

*3:もちろん、鐘の音が音楽であることを主張する人たちも少なくありません。鐘ってほんと良いですよね。国によって音の響き方とかも全然違うし、面白い世界だと思います。ところで湊みおちゃんの心の鐘、鳴らしてみたいですよね。

*4:もしかすると、街に鐘を電子化するだけの予算がなくて、単に我慢しているだけなのかもしれませんが。

*5:元々カリヨンというのは演奏の為に複数個で構成された教会に設置されている鐘のことです。これについてはまた別の話になるので、興味があればぜひ調べてください。